不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
どれほど時間が過ぎただろうか。ジリアンが口を開く。
「実際は、北の方が闘技よりも危険が大きい。戻れなかった場合を考えて、〈召喚〉に関する魔法陣も理論も〈記録の魔法具〉にしてルースに託してある」
戻れなかった場合と聞いて、まゆこは慄く。心臓がきりりと痛んだ。
「ルースからゲオルグに渡る手はずだ。ほぼ完成しているから、あいつなら、いつかおまえを安全に元の世界へ戻せるかもしれない」
「安全……わたしの安全? ジリアンは、いつもそれを考えているのね」
「〈召喚条件〉を話そう。いまでなければ、私の口から話せなくなるかもしれないからな」
鼓動が速まる。
夢を見た。躓いたそのとき、迫ってくる影があった。
外は雪が次第に多くなっているようだった。雪は音を吸収するという。そのせいなのかとても静かだ。ジリアンの声だけが、深く静かにまゆこに届く。
「〈召喚条件〉は、人であること。子供を産める若い女性であること。伴侶がまだいないこと。そして――死に直面している者」
「死に、直面……っ」
分かっていた気がするが、はっきり言われると予想以上の衝撃がきた。
「その世界からもぎ取ってしまうのだから、せめて、こちらに連れてこない場合でも、その世界から離脱する者を条件にした」
トラックが迫っていた。転んだ先の道路で、まゆこは事故にあうはずだったのだ。
「実際は、北の方が闘技よりも危険が大きい。戻れなかった場合を考えて、〈召喚〉に関する魔法陣も理論も〈記録の魔法具〉にしてルースに託してある」
戻れなかった場合と聞いて、まゆこは慄く。心臓がきりりと痛んだ。
「ルースからゲオルグに渡る手はずだ。ほぼ完成しているから、あいつなら、いつかおまえを安全に元の世界へ戻せるかもしれない」
「安全……わたしの安全? ジリアンは、いつもそれを考えているのね」
「〈召喚条件〉を話そう。いまでなければ、私の口から話せなくなるかもしれないからな」
鼓動が速まる。
夢を見た。躓いたそのとき、迫ってくる影があった。
外は雪が次第に多くなっているようだった。雪は音を吸収するという。そのせいなのかとても静かだ。ジリアンの声だけが、深く静かにまゆこに届く。
「〈召喚条件〉は、人であること。子供を産める若い女性であること。伴侶がまだいないこと。そして――死に直面している者」
「死に、直面……っ」
分かっていた気がするが、はっきり言われると予想以上の衝撃がきた。
「その世界からもぎ取ってしまうのだから、せめて、こちらに連れてこない場合でも、その世界から離脱する者を条件にした」
トラックが迫っていた。転んだ先の道路で、まゆこは事故にあうはずだったのだ。