不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 彼は決断して、覚悟も持っている。止められるものではなかった。

 ジリアンは、〈帰還条件〉は〈同じ状況〉だと言った。つまりは、ウィズ世界で死に直面したときが帰るときになる。

 ――どちらの世界でも、運命は巡ってくるということね……。

 帰るつもりならそこは外せないのかと、妙に冷静になって考えた。

 責任を果たそうという彼の気持ちが眩しいほどだ。そして哀しい。ジリアンの〈ただ一人愛する者〉でなかったことが、とてつもなく悲しい。

 腹の中にあるという丹田。そこからくみ出した気力を総ざらえしながら口元に笑みを浮かばせる。

「奥義の中には、あなたの呪いを解く方法もあるかもしれないわね。ジリアンは王冠が似合うと思うわ。まずは、無事に魔法闘技を終えないと。北へ行っても必ず戻ってきてね。約束を果たすために。そうでしょう?」

「そうだ」

 強く頷く彼を見ていた。

 ジリアンもまゆこを見ている。一体何度こうして見つめ合ったことか。
< 255 / 360 >

この作品をシェア

pagetop