不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 なにをどう許さないというのか。

 まゆこに危害を加えられてはたまらないから、カーライルの暴挙を止めるよう兄のダレルと交渉することを決める。

 面倒事を嫌うダレルは、カーライルの魔法力を封印して幽閉する可能性が高い。

 以前はそれを可哀そうに思う気持ちもあったが、いまはまゆこがなにより大事だ。傷つけようとするなら排除する。

 長い通路を歩きながら、ジリアンは目の前まで手を上げて手の平を開く。

 そこには、まゆこの指から引き取った前の指輪が乗っていた。

 わずかとはいえ己の一部から作った指輪だ。砂塵にしてもよかったが、彼女が嵌めていたものだと思うと惜しくてできない。

 ジリアンはそれを左手の小指に嵌めた。

 そして、拳を作って指輪にそっと唇をつける。

 ――マユコの香りがする……。

 本当にわずかなものだが感じ取れた。
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