不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 通路の出口が見えてきた。ジリアンの両眼が鋭さを増す。上着のポケットに入れておいた黒革の手袋を取り出してぐっと嵌めた。

 ジリアンが闘技場に入ると、一斉に立ち上がった人々が、満場になった観客席で大歓声を上げる。特別席を見上げれば、バーンベルグ家の場所にちょうどまゆこが入ってくるところだった。

 ――愛している。

 たとえ声が届かなくても、たとえ想いを告げることができなくても。

 まゆこを守るために、全力を尽くそう。
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