不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 闘技場の特別席に入ったまゆこは、眼下に一望できる戦闘の場を凝視する。

 箱型で屋根もあるから、雪がちらつく中でも凍えることはない。内部には暖房として小さな暖炉まであった。

 箱の中にも席順はある。まゆこは最前列の真ん中左寄りだ。すぐ横は、ジリアンが観客になることがあれば彼の席になる。

 ルースはジリアンのうしろの席で、親類縁者がいないバーンベルグ家では、他の椅子は空きだ。

 最奥に出入り口がある。出入り口のすぐ外は、王城から派遣された衛兵が二人立っていた。

 入ってすぐのところは、お付きの者たちの場所になる。

 椅子が空いているから座るようエルマとテオに言うと、彼らは激しく首を振って『お付きの者がご一緒には座れません』と断ってきた。

 エルマはテオのことをひどく気にしている様子だ。

 恋の橋渡しなど、まゆこの不得意中の不得意だから見守るしかない。いまはとくに、他のことに意識を割く余裕はなかった。
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