不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 音もすごいが、とにかく空気の圧力によって後ろへ押される。

 最後に大きく爆発した。かろうじて、ゲオルグの右腕が膨らんで爆ぜてゆくのが見えた。血しぶきが舞う。

「ジリアン、おまえ、ここまで――」

「負けを認めろ。この腕、いまなら治癒魔法で元に戻る」

 ジリアンが出していたのは左腕だが、彼の右腕が上がってくる。拳の周囲には青い炎が巻いていた。

 はるかな高みにある空の雲を利用したジリアン。一面を覆っていた雲が切れてゆくほど、水蒸気と氷の粒を集めて使った。強大な魔法だった。

 ゲオルグはまだ左腕が残っている。それでも、同じようにぶつかれば、絶対零度の魔法に呑み込まれるのは明白だった。

 彼には能力の高さに見合うだけの判断力もある。

「認める。俺の負けだ」

 ジリアンがすっと後ろに引いた。ゲオルグはぐらりと傾いて地面に倒れる。
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