不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 闘技場は、興奮した観客たちの歓声で埋まっている。すべてを揺るがすような音響で、新しい王の誕生と、その対戦者を称えている。

 再び降り始めた雪の中で、新しい時代の幕開けに立ち会った幸運を誰もが喜んだ。

 ジリアンは倒れた状態のゲオルグの傍に立って見下ろす。

「いい加減起きろ。そこまでのダメージではないんだろう? おまえ、ヴォーデモンがフォンダンと組んだのが気に入らなくて拗ねているのか」

 二つの家が手を組んだことは、ゲオルグの意に反しているだろうとジリアンは予測していた。

 ゲオルグは不満げな様子を隠しもせずに答えてくる。

「裏取引があったからって、闘技に手を抜いたわけじゃないさ。お膳立ては有効利用するつもりだった。……すぐに行くのか?」

 半身を起こしたゲオルグに聞かれて、ジリアンは空を眺めた。

 雲が切れたのは一時的なもので、いまはまた雪が降っている。この場から北の障壁まで、三家の後継者なら一度の空間跳躍で辿りつけるだろう。
< 289 / 360 >

この作品をシェア

pagetop