不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 残ったエルマたちは疲れた表情で馬車へ向けてゆっくり動き出す。

 まゆこは、ゲオルグが片腕に怪我をしていても、魔法を行使するのにさほど支障がなかったのを見て、どうしても言わずにいられなくなった。

 ゲオルグの前に立ち、真剣な面持ちで顔を向ける。

 ただ事ではない彼女の様子を見て、ゲオルグから軽い調子が消えた。

「どうした、マユコ」

「怪我をされても、魔法の力はほとんど変わらないのですね。それなら、ジリアンの助けに行くこともできるのではありませんか? 他の人もそうです。障壁の崩壊はゲルツ王国の一大事なのでしょう? なぜ、皆で協力しないの」

 自分にしては強くはっきり言ったつもりだ。

 ラボで室長補佐に稟議書を上げるときの気持ちが蘇ってくる。

 言葉で返すことはほとんどなかったが、自分の意見を何らかの形にする方法はあった。他ならぬ室長補佐が教えてくれていたのだ。
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