不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 ルースとエルマが振り返ってまゆこを注視する。

 ゲオルグは苦虫を噛み潰したような顔をした。

「他の家の者が助けたら、ジリアンは王にはなれないぞ。誰も認めなくなってしまう。あいつは王になりたいんだ。だからこそ、闘技で勝利をもぎ取った。助けに行けばすべて無駄になる」

「ジリアンは『危険』だと言ったの。戻れないかもしれないと考えていたわ」

「俺は王のスペアだ。スペアも一緒に行ってどちらも倒れたら、国としてどうしようもなくなるだろう? いまの俺の義務は待機だ。他の者も動かない。第一、あそこは魔法領域が歪んでいて、力がある者でも魔法を行使するのは難しいんだ」

「障壁に穴が空いて、魔物がたくさん入り込んでいるのでしょう? 門を探して詠唱をするのに、彼の背中を誰が守るんです」

 黙ってまゆこを見下していたゲオルグは言う。

「他の家の者だったら、一族総出で行く。だが、ジリアンは一人だから、どうしようもないんだ」

 ジリアンは一人で行く。たった一人のバーンベルグだから。
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