不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 見上げた状態で動けなくなってしまった。

 まゆこの大きく見開かれた瞳に涙が溜まる。泣くのを堪えることすら頭の中に浮かばなかった。一筋頬を流れてもそのままだ。

 かつてジリアンが言った言葉が胸の内で甦る。静かに伝わり、身体の中に落ちてくる声が、頭の中に、胸に、腹の奥に残っている。

 まゆこを揺り動かす声。

『家族、か。良い響きだ』

 ぼろぼろと涙が溢れる。一人で動くしかないジリアン。どうしようもないのは誰もが分かっている。なにより彼自身が。

 まゆこは服の袖で自分の目元を拭いた。

 行儀が悪いとデイジーに叱られそうだ。それでもごしごしと拭く。

 ずっと考えていた。いったい自分はなぜウィズへ来たのだろうかと。
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