不本意ですが、異世界で救世主はじめました。
 慌てて手を上げると、ひとさし指の先に線を引いたようなわずかな傷と、端から滲み出た極小の血の玉が目に入る。

「マユコ様。大丈夫ですか?」

「小さな傷よ。ふき取ってしまえばいいわ。ハンカチがポケットにあったわね」

 ドレスの裳裾には隠しポケットがある。そこに毎日、四方がレースになっている上質なハンカチーフを着付けの侍女が入れてくれていた。

 まゆこはそれを出して手先を拭く。

 急いで葉の方を見やれば、棘の先にも微小な赤い雫が載っていた。

「虫が来ちゃう? 来るかどうかなんて分からないけど、これ、まずいよね」

 呟いてまた屈み込む。

「マユコ様。私がやりますので」

「いいわ。すぐに終わるから」
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