隠れクール上司~その素顔は君には見せはしない~1
絶対内緒ね。
 その後個人的な連絡先も知らなかったので、会ったのは4日後の会社だった。

 何度も、何度もシミュレーションして、話しかけるタイミングを見計らう。

 もちろん、誰もいない場所でないとできない会話なので、出社直後の店に1人きりのタイミングで自分も出社して、店長室に行って話しかけよう。

「………」

と、思っていたのに、出社すると、すでに何人も来ている。

 二人きりで話しができればいいんだけどなと思いながら、意を決してすぐに店長室を覗いた。

「……」

 いた。しかも他の誰もいない。

「あの、おはようございます!」

「はーい、おはよう」

 こちらを見ず、画面を凝視している。忙しいことは分かっているけど、今言わないと絶対に後悔する。

 今しかない。

 時間までにしなくてはいけないことがかさんでいて、こちらになんか全然向いてないけど、その!!

「おはようございまーす」

 背後から他の従業員が入室し、また同じように

「はーい、おはようございます」

 と、顔を見ずに挨拶する。

「………!!」

が、ふとこちらを見た。

 固まる美生。完全に目が合っている。

 が、他の従業員が資料を探しているため、今ここでホテルに運んでくれてなど、お礼を言いようがない。

「………」

 そのまま、画面を見つめなおす関。

 どうしようか、今ここで言おうか、やめようか。迷っている間に部外者が退室し、今だと

「あの!!」

 その視線をこちらに向けさせた。

「ああ、あれから…」

 予想外に関が口を開いたので、被せる形で、

「すみませんでした!!」

 ありがとうございましたと礼を述べるつもりが、色々意味を込めて謝ってしまう。

「あ、いや…」

「ありがとうございました!!」

「あ、別に…」

「おはようごいます!!」

 またもや別の従業員が入ってくる。

「体調は大丈夫だったの?」

 関は画面を見ながら誰ともなしに言っている。

 えっと、私は…。

「あ、はい。おかげ様で、よくなりました」

 別の従業員が答えた。

 知らない間に私との会話は、即刻終了してしまっていたのである。
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