秘書課恋愛白書
「すみません。ありがとうござい…」
「……綾女?」
「…ます」
え?いま名前呼ばれた気がするけど気のせい?
綾女って私の名前だよな?
京都に知り合いなんていないし、ここにも今日初めてきたし…
なんて数秒考えて、手渡された手がピタリと止まって顔を上げるとそこには見知った顔がいた。
「………ユウ?」
忘れることはない。
私の数年間を一緒に過ごした元彼の姿がそこにはあった。
酔いが回っているせいかすぐには気づかなかった。
だが向こうはビックリした表情をして私の後ろで突っ立っていた。
だがお店の出入口から声が掛かると我に返ったように返事をする。
「おーい、木内いくぞー」
「すみません、俺やっぱり二次会パスで!」
こちらに向かって声をかけるサラリーマンにごめん、とポーズして笑う姿はやっぱり元彼で。
ポカン、と開いた口が閉まらない私はただただその姿を見つめていた。
お店の扉が閉まると元彼…ユウはカウンター席の私の隣に腰を下ろす。
着ていたスーツのジャケットを背もたれにかけるとネクタイを緩め、ワイシャツを腕まくりした。
その行動一つ一つに目が離せない。