秘書課恋愛白書

きっと社長のことだ。

お客様にお茶も出さずに話し込んでるのに違いない。

給湯室でお湯を沸かしつつお茶の準備しながら、中の様子を伺うべく社長室へと近づいた。


社長ったら、扉も閉めないで…

大事な話誰かに聞かれたらどうするんだ。

閉まっていない扉から光が漏れていて、話し声が聞こえていた。


ん…女の人の声?え?

社長のお客様って女の人なの?


でもさっき飯島さんは"KANDACorporation"の社長って言ってたような…

その人がそうなのか、それともまた違う人なのか。

社長の楽しそうな笑い声が中から聞こえてきて、自分以外の女の人と楽しそうに話す社長の姿を想像する。

ズキッと胸が痛んだ。

そんな親しい間柄の女の人って、一体誰?


ドクドクと早くなる心臓。

気づけば盗み見るように中を覗いていた。

逆光で二人の顔は見えない。

社長の前で話す女性はとても距離が近く感じた。

後ろ姿だけしかわからないがスラッとしていて長い髪がふわふわに揺れている。


そして……社長が寄り添い、

二つの影が重なったのを私は見逃さなかった。

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