秘書課恋愛白書

「えっ……」


思わず声が漏れてしまい、自分の口を両手で塞いで扉を背に深呼吸をする。


キ、ス…してた?

いやいや…何かの見間違いかもしれない。

社長はもう他の人とあんなことしないって言ったし、それを信じたかった。


ドンッ


自分の心を落ち着かせていると中から激しい音が聞こえて体を強張らせた。

な、何事?!

いま大きな音が中からしたけど大丈夫だろうか?!

そう思ってすぐさま扉に手を掛ける。


「大丈夫です……か……」


慌てて飛び込んだ社長室。

ノックもせずに社長室へと踏み込んで、これほどまでに自分の軽率な行動を恨んだことはないだろう。

入った逆光で顔は見えなかったが、デスク前に倒れ込み向かい合って重なる二つの影が露見して思わず目を見開いた。


「……え」


やっぱり、私の見間違いじゃなかったの?

社長と女の人…キス…して、た?


「綾女……?」


社長が私の名を呼ぶ。

倒れていた体をゆっくりと起こして社長は頭をさすり、女の人を抱きかかえていた。
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