秘書課恋愛白書
ここまで来れば、大丈夫だろう。
ホッと胸を撫で下ろして足取り軽く歩き続ける。
社長専用フロアを降りて一般社員たちの働くフロアへと戻ってきた。
自分のデスクがある"秘書課"へと向かった。
コンコン、と数回扉をノックして中へと足を踏み入れる。
「お疲れ様です。一度戻りました」
「お疲れ様です、中原さん。社長はいいの?」
秘書課の室長である三谷さんが私を迎えてくれた。
秘書課としては珍しい男性室長。
聞くところによると実は三谷室長、私の勤め先である『Mキャリア』の社長御子息だそうでここへは修行のつもりで働いているらしい。
まさか自分の勤める会社の御子息とここで出会うとは思いもよらなかった。
しかも室長とはいえ、こう見えて私の一個下。
年齢関係なくデキる人間を評価する会社の姿勢は尊敬する。
"社長以外"は大変良い企業だと思う。
「社長はー…、多分大丈夫です」
笑顔を浮かべながらも背中に変な汗をかいている。
室長相手に社長から逃げて来たなんて口が裂けても言えない。