秘書課恋愛白書
ぐるりと鏡の前でに立たされると背中に回った社長が私の首筋に手を這わす。
今日初めてちゃんと見る鏡越しの自分の姿。
フリル襟から覗くその首筋には数カ所、赤い斑点のようなものが出来ていて私は悲鳴をあげた。
「何ですかこれ!」
「やだなぁ僕に言わせたいの?」
「なっななな……」
鏡映る社長はクスリと笑って私の耳元で囁き、赤い斑点を一つずつ指でなぞる。
ゾクッとして取られた腕を振り解こうとするが、社長の力には敵わなかった。
「そんなに私のこと苛めて楽しいですか?!こういうことしてるから秘書がやめていくんですよ?!」
「綾女にしかしてないよ」
「はあ…?!」
そう言ってちゅ、と私の首筋に軽くキスを落とす。
またこの人はどさくさに紛れて…
顔を真っ赤にして震える私とは対照的に、清々しい顔した社長を殴り飛ばしたい。
そしてまたくるりと体制を変えられて、鏡を背にして社長と向き合うような形になる。
「きゃっ」
「恥ずかしいの?」
「っ……」
耳元で喋らないで欲しい。
こんな状態、恥ずかしくないわけがないでしょ!