未完成のユメミヅキ
今日もできれば早く帰宅をしたかった。
昨日お願いした通り、お母さんがキーホルダーの部品を買ってきてくれている。さっき携帯にメッセージが入っていたから。
帰りたくて、ソワソワと上の空で授業を受けていたのが伝わってしまったのか、最後の授業で先生から指名されて「話を聞いていませんでした」と答え、クラスメイトの笑いを誘ってしまった。
「吉川ぁ、このプリント、職員室まで一緒に運んで」
授業が終わったタイミングで先生に呼ばれてしまった。質問に答えられなかった罰ゲームみたいなものだ。
早く帰りたいというのに。
数学の小谷先生は、名前に似合わず見かけは大谷で身長は180cmを優に超えていると思われる。タロちゃんより大きい。
プリントが入った段ボールを渡されて、持ってみると思いのほか軽くて拍子抜けする。しかし、高さがあるので視界が半分ほど塞がれる。
「なに、そんな重いもの大事な生徒の、しかも女子に持たせるわけないだろ。でも前方に注意しろよ。お前小さいから顔が隠れてんじゃん」
「隠れてんじゃんじゃないですよ。こんな軽かったら先生、自分で持てるじゃないですかぁ」
段ボールは両手で抱えなくちゃいけない大きさだけれど、中身はA4生徒人数分。裁縫の針しか持ったことがないわけじゃないからこんなの余裕。
「馬鹿だな、お前。可愛い新入生JKと廊下歩きたいって思うだろ、春だぞ」
「ちょっとなに言ってるのか分かりません」
「なにその蔑みの眼差し」
口を尖らせた小谷先生を見上げる。
小谷先生は数学の教師。
異色の経歴の持ち主で、県内のプロバスケチーム『仙台sparrows』略して仙スパの選手だったそうだ。怪我をして引退、そして高校教師になった。元々、教員免許を取得していたらしい。
と、最初の授業で自己紹介をしていた。そして、もちろん、小谷先生が男バスの顧問。
「先生、身長何センチあるんですか?」
「190cmある」
「でか!!」
「心もデカイ。太平洋のような男だと言われる」
言われるって、いったい誰に。
「吉川は、タロと亜弥と中学から一緒なんだってな」
亜弥は早速、呼び捨てにされている。亜弥は数学が得意で、先生にガンガン質問しに行くことも迷わない性格だから、仲良くなっているのかもしれない。
「そうなんですよ。タロちゃんは海英でも活躍できるし、亜弥は理数系美少女でわたしの自慢です」
「友達を褒められるっていうのは、吉川の良いところだな」
昨日お願いした通り、お母さんがキーホルダーの部品を買ってきてくれている。さっき携帯にメッセージが入っていたから。
帰りたくて、ソワソワと上の空で授業を受けていたのが伝わってしまったのか、最後の授業で先生から指名されて「話を聞いていませんでした」と答え、クラスメイトの笑いを誘ってしまった。
「吉川ぁ、このプリント、職員室まで一緒に運んで」
授業が終わったタイミングで先生に呼ばれてしまった。質問に答えられなかった罰ゲームみたいなものだ。
早く帰りたいというのに。
数学の小谷先生は、名前に似合わず見かけは大谷で身長は180cmを優に超えていると思われる。タロちゃんより大きい。
プリントが入った段ボールを渡されて、持ってみると思いのほか軽くて拍子抜けする。しかし、高さがあるので視界が半分ほど塞がれる。
「なに、そんな重いもの大事な生徒の、しかも女子に持たせるわけないだろ。でも前方に注意しろよ。お前小さいから顔が隠れてんじゃん」
「隠れてんじゃんじゃないですよ。こんな軽かったら先生、自分で持てるじゃないですかぁ」
段ボールは両手で抱えなくちゃいけない大きさだけれど、中身はA4生徒人数分。裁縫の針しか持ったことがないわけじゃないからこんなの余裕。
「馬鹿だな、お前。可愛い新入生JKと廊下歩きたいって思うだろ、春だぞ」
「ちょっとなに言ってるのか分かりません」
「なにその蔑みの眼差し」
口を尖らせた小谷先生を見上げる。
小谷先生は数学の教師。
異色の経歴の持ち主で、県内のプロバスケチーム『仙台sparrows』略して仙スパの選手だったそうだ。怪我をして引退、そして高校教師になった。元々、教員免許を取得していたらしい。
と、最初の授業で自己紹介をしていた。そして、もちろん、小谷先生が男バスの顧問。
「先生、身長何センチあるんですか?」
「190cmある」
「でか!!」
「心もデカイ。太平洋のような男だと言われる」
言われるって、いったい誰に。
「吉川は、タロと亜弥と中学から一緒なんだってな」
亜弥は早速、呼び捨てにされている。亜弥は数学が得意で、先生にガンガン質問しに行くことも迷わない性格だから、仲良くなっているのかもしれない。
「そうなんですよ。タロちゃんは海英でも活躍できるし、亜弥は理数系美少女でわたしの自慢です」
「友達を褒められるっていうのは、吉川の良いところだな」