未完成のユメミヅキ
「そうだ、お母さん今日お客さん来るって言ってたよね」

「ああ、お断りしたよ。あなたの風邪うつしちゃ大変ですからね」

 ああ、それは申し訳ない。お茶とケーキでおしゃべりを楽しむはずだったのだろう。


 スポーツドリンクのペットボトル、コップと薬が乗ったトレーを置いて、お母さんは部屋を出ていった。

 ベッドの上で、だるい手を動かしてプリンを半分ほど食べ、薬をスポーツドリンクで流し込む。早く熱が下がるといい。ぼーっとするし、動けない。

 布団に体を横たえる。
 ふわりと浮くような感覚と熱っぽさが全身を包む。目を閉じると眼球も熱を持っていると感じた。

 また、お母さんにロールケーキを買ってきてあげよう。あのお店に行こう。亜弥も一緒だといいのだけれど。

 和泉くん、わたしの顔を見たくないかもしれないけれど、話しかけないで買い物するから、だから、いいよね。

 見ているだけなら、いいよね。そして、それで終わりにするから。お店には行かない。

 和泉くんを、中学のときから考えていたのだ。すぐに忘れることなんてできないし。

 キーホルダーを返すって言ったときの彼を思い出す。

 そんな、辛そうな顔をしないで。



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