一匹狼くん、拾いました。




「……岳斗、なんで俺が危ないってわかった?」



「お前の母親が電話してきたんだよ!!相談しろよ!!なんで楓にも俺にも言わなかった!あいつはもう……っ」




俺の胸ぐらを掴んで、岳斗は泣き崩れた。





「……ごめん、巻き込みたくなかったんだ。でも、隠した意味なかったな。結局巻き込んで、俺は楓を殺した」





「……っ、お前のせいじゃない。悪いのはお前の父親だ」






岳斗は、俺の頭を優しく撫でた。







残された俺には、圧倒的な絶望感とペアルックのパーカーだけが残った。







楓………。






笑うことも、泣くことも、温もりも、楽しいことも、悲しいことも、全部君は教えてくれた。






それなのに俺は、守れなかった。







生きる意味を無くした。









家の中が地獄当然だった俺は、楓といる時間が何より幸福だった。






楓は俺の全てだった。






彼女が死んでから、俺の心はずっと寒い。






冷たい………。





それはまるで、永遠と父さんから冷水を浴びせられているみたいに。






< 59 / 236 >

この作品をシェア

pagetop