嘘つきピエロは息をしていない

「そんなことないですよ?」

 なにも答えてはくれない、部長。

「また、テスト終わったら、演劇部のこと相談に乗ってくれるって。約束してくれたんです」
「吉川」
「……はい」

 自分の声が、僅かに震えていることに気付いた。

「さっき私は、恋人ごっこに意味がないと言ったが訂正する。マイナスだ。君はやっちゃいけないことをした」
「やっちゃいけない、こと?」
「仲間を騙した」
「そんな……だって。それは、お芝居の勉強になるからと思って。実際、彼氏というものはこうなんだなって少し感じられたわけで。あとでちゃんと、ネタバラシするからって、いっちゃんが……」
「斉に言われたらなんでもするのか?」
「え?」
「キスしようって言われたら、していたか?」
「……!」
「それとも。既にしたあとか?」
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