嘘つきピエロは息をしていない

「吉川の決めたことにあまり口を挟むべきではないのかもしれない。だけどこれは言わせて欲しい。斉にファーストキスを捧げるのは、ちょっと違うんじゃないか?」
「…………」
「質問を変えよう。練習相手が内藤でもキスできるか?」
「えっ……な、絶対に、無理です!」

 想像した途端に体温が上昇してきた。

 顔が熱い。

 心臓だって普段より波打っていて、私は相当気が動転していることに気づく。

 地味メガネのナイキくんが眼鏡を外して、あの綺麗な顔を私に向かって近づけてくるなんて考えただけで気絶しそうだ。

「はは。即答か」
「っていうか、ナイキくんが嫌がると思います!」
「なぜ?」
「……女の子、好きじゃないみたいですから。それに私、幼稚園児扱いされてます」
「そうかな」
「そうですよ?」
「吉川。いいことを思いついたよ」
「いいこと、ですか?」
「内藤に告れ」
「…………」
「明日の朝。校門で待ち伏せして告れ」
「なっ……なんで!? さっき部長、仲間を騙すのは良くないって言ったじゃないですか!」
「いいから告れ」
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