嘘つきピエロは息をしていない


 部長らしくない。

 いつもは、こんな私が困るようなこと絶対に言い出さないのに。

「告った十秒後に私からの命令だったとバラせ」
「そんなにはやく!?」
「ただの度胸だめしだ。やれるな?」
「…………」
「いいや、やってこい。部長命令だ。私を欺いた罰なんだからそのくらいやれ」

 やっぱり部長怒ってるんですね?

「レポートよろしく」
「……ハイ」

 とんでもない報告書を作成することになってしまった。

「斉から聞いてはいた。昔から吉川が芝居が好きで、たびたび付き合っていたと」

 いっちゃんが部長に私との思い出話をしていたなんて驚きだけど、なんだか嬉しい。

「最初の演技はなんだった?」
「……最初、ですか?」
「ああ。なにがそんなに楽しくてハマったのかと思ってな。きっかけはなんだ?」

 私は芝居が好きだ。

 芝居なしじゃ生きられない。

 そう思って生きてきた。

 ――それは、なぜ?

「答えたくないか?」

 答えたくないわけじゃない。

「思い出せません」

 どうして。
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