嘘つきピエロは息をしていない
「部長、説教はそのへんで勘弁してください。あとは俺が叱られます」
いっちゃんが戻ってきた。
「なんだ斉。叱られる自覚はあったのか」
「まあ、それなりには」
「優等生のお前らしくないな」
「俺、いつも優等生でいられる余裕あるわけじゃないので」
「なるほどな」
穏やかな顔つきになる、部長。
もう怒ってはいないようだ。
「それで、なんの話してたんです?」
「君たちの芝居ごっこの始まりはいつか聞いていた。一色は覚えてるか?」
「覚えていません」
「本当に?」
「ええ。ガキの頃の話ですから」
それもそうだよね。
なんとなく始めたことだし、小さい頃の記憶が鮮明には残っていないよね。
「しゅうごーう!」
安達先輩に呼ばれた。
これからストレッチ、筋トレ、発声練習が始まる。
いつもならその一連の流れに集中しているはずなのに。
【内藤に告れ】
部長の言葉が、頭から、離れない。
私ちゃんと明日ナイキくんにドッキリ成功させられるだろうか。