嘘つきピエロは息をしていない
二
「ウチキ、いいところに現れた」
朝、そこの角を曲がれば校門が見えるという場所でクラスメイトの神脇と宇野が絡んできた。
……ウゼェ。
「数学の課題見せてくれよ。塾の勉強で手一杯でさ。学校のなんてやってられなくて」
肩を組んでくる。
触んな。
一時間目の授業開始直前に委員長が集めておくやつか。
それまでに丸写ししてしまおう、という魂胆だ。
「俺ら仲間だろ? 助け合おうぜ」
――仲間?
「……クソが」
つぶやいてから、しまった、と我に返った。
これまでスルーしてきたヤツらに思わず反抗的な態度をとったのは、アイツが俺に同じ言葉を向けてきたことを思い出したからだ。
「なんだとウチキ」
ああ、もう、めんどくせぇな――
「お前ら――……」
途中で言葉が切れたのは、視界に、アイツが飛び込んできたからだ。
世界一会いたくなかった、アイツが。