嘘つきピエロは息をしていない
校門前に立つアイツは夏服を着ていて、持っている茶色い革製のスクールバッグとローファーは、ようやく馴染んできたといった様子で。
いつもおろしている髪は、なぜか緩く三つ編みで二つに結われていた。
なにオシャレしちゃってんの。
ああそうか、カレシのためか。
門の前に立つな。
俺そこ通らなきゃならねーんだよ。
「おいウチキ。さっきから態度悪い――」
「うっせぇ今それどころじゃねーから黙ってろ」
肩に乗せられた神脇の手を振り払う。
「黙ってろってなんだよ、ウチキ――」
「しつけぇなブッコロされてーのか」
「……っ!?」
吉川にいかに気づかれずに門をくぐるかだが。
不可能に近い。
いや、気づかれてもかまわないか。
同じ学校で過ごしている同級生がすれ違わない方が不自然だ。
だけど俺、今アイツと普通に話せる自信ねぇなぁ。
俺の後方で神脇と宇野が目を見開いて石みたいに固まってしまった。
もうこの際だから殴りかかってくるなら受けて立とうと思ったがエリートなおぼっちゃんは喧嘩もしたことがないようだな。
ザコめ。
「お、おはよう! ナイキくん!」
――声かけんなっつの
「……おう」
「教室まで一緒に行こ?」