嘘つきピエロは息をしていない

「そうだ! 誰もいないところ行かない?」
「はぁ?」
「二人になろう!」
「それは色んな意味で危ねぇと思うわ」

 俺、なにするかわかんねぇよ。

 自制きかなくなって、後先考えず、無理矢理お前のこと俺のものにしたくなるかもしれない。

 そしてきっと俺は後悔する。

 お前のことだって傷つけてしまうだろう。

 だったら距離置くしかねぇだろう?

 出逢わなければ。

 最初からこんな特別な感情抱かなければ、どれだけ楽だった?

「え!? 周りに人がいないのに危ないの?」

 いや、それは考えても仕方ねぇ。

 コイツと出逢ったことも、コイツの存在も否定してたまるかよ。

 俺は吉川といて楽しかった。

 救われた。

 心が、軽くなった。

 それが今はこんなにも――

「試しに行ってみるか」
「うん!」
「うんって……」

 ――ほんとバカだな、お前。
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