嘘つきピエロは息をしていない

「内藤のじゃないか?」

 そう言ったのは、部長だった。

「内藤……ああ、幽霊部員の」
「一度も来ないよね。まあ幽霊部員だから仕方ないけど」
「にしてもさぁ。いっかいくらい顔見せてもいいのにね」
「それな」

 安達先輩と新見先輩がそんな会話をしていると、コツ、コツ、と足音が近づいてきて。

 ――ガラッ

 部室の引き戸が開けられた。

「やぁ。甘い香りに誘われて来ちまったよ」

 登場したのは、あの男。

「たもっちゃんー! 会いたかった!」

 シッポを振って主人の元に飛んでいくワンコのような新見先輩を、白木氏が魂の抜けそうな顔で見つめている。

「って。えぇえ!?」

 保先生の横に、誰かいるらしい。

 ここからは死角になっていて、見えないが。

 新見先輩がすごく驚いている。

「ピチピチの一年を連れてきたぞ」

 ――?

「入れよ」

 保先生と部室に入ってきたのは……

「こんにちは」

 西条くんだったんだ。

< 229 / 294 >

この作品をシェア

pagetop