嘘つきピエロは息をしていない
思い返せば部活の勧誘だってうまくできずじまいなのに。
合宿の参加ってハードル高すぎるよね。
「そんなもん。『稽古のあと、二人きりで夏の思い出作りたいなぁ』って誘えば死ぬ気でくるんじゃねーの」
「夏の思い出って花火とかですか? それは楽しそうだけど……それなら二人じゃなくてみんなでやる方が盛り上がりますね!」
「…………」
「先生?」
保先生が眉間にシワを寄せ、なにか言いたげにしている。
西条くんが「きっと来ますよ」とつぶやいた。
(あれ?)
西条くんはナイキくんが幽霊部員してること知らないはずなのに。
すべて事情を把握していそうな。
もしかして、先生から何か聞いたのかな。
「なにを不服そうにしている」
部長が、いっちゃんの傍にいってなにか話しかけている。
脚本のことかな。
「かわいい雛鳥をいつまでも籠の中で独り占めしたくなる気持ちはわかるけどね。君に成長を邪魔する権利なんてないよ」
「わかってますよ。きりは、きりらしく生きればいい」
「わかっているとは思えないな」
「わかってるんです。……頭では」
「今年は一段と熱い夏になりそうだな、一色」
「そうですね」