嘘つきピエロは息をしていない
「さっきの子は?」
「空手部のマネージャー」
「え……」
「勧誘されてる。すげぇしつこい」
それは自分も人のこと言えない。
ナイキくんのこと欲しくて仕方ないから。
だけど、どうしてナイキくんが目をつけられたんだろう。
とてもじゃないが、今の眼鏡をかけてモサモサっとしている姿は強そうには見えない。
「実は一週間くらい前に廊下で偶然あの子といるの見かけてたんだけど。ナイキくんは私に全然気付かなかったよ」
「気づいてたけど」
「え……そうなの?」
「まあ。話してる途中だったし。別に声かける用事もなかったし」
お互いに気づいてはいたんだね。
でも挨拶は交わさなかった。
そっか。
気づいてたんだ、私のこと。
「いい雰囲気だったな。西条と」
「うん!」
「うんって……」
「え?」
「いや。別に」
ナイキくんが「別に」って言うたびに、なにか言葉を呑み込んでいるような気がして。
それを知りたいのに、うまく聞くことができない。
「部活のこととか色々話そうよってことで西条くんの家に行くことになったんだけど。なぜか先輩のマンションに招待されちゃって。多分そこでなにか見せてくれようとしたんだけど。私、寝ちゃって。そしたら、保先生が送ってくれて!」
「そんだけ?」
「え!?」
「……そうか」