嘘つきピエロは息をしていない

 保に返事することなく、一色は話を切り出した。

「きりは、瀕死状態から生き残った子供です」

 その言葉に引きつった顔をしたのは俺と西条だった。

 相川と保は、表情一つ変えない。

「きりが児童相談所に緊急一時保護されたとき、もう三歳になるというのに、赤子のようだったらしいです。

歩けず、自分でご飯も食べられなければ、トイレにだって行けない。身体も本当に小さかった。

当時きりを担当していた職員は、こう話している。『吉川きりは凄まじい生命力を持っている子供だ』と」

 ――あの吉川が

「きりは親に捨てられたんです。今は、子供のいない夫婦の養子になって暮らしてる」
「なぁ、斉。それは吉川から聞いたのか?」
「……いいえ。俺が自分で調べました。きりは俺が知っているとは思っていませんし。俺はきり以上にきりの過去ことを把握しています」
「吉川に、当時の記憶がないのか?」
< 253 / 294 >

この作品をシェア

pagetop