嘘つきピエロは息をしていない

 いっちゃんの親は、いっちゃんが言うことさえ聞いていれば、寛容なんだって。

 ワタシにかまうのだって全然嫌がっていないし、遊びに行ったワタシをいっちゃんのお母さんは笑顔で迎えてくれた。

 ただ、その“言うこと”の中には“余計な趣味を持つな”というものが含まれている。だからいっちゃんは、物語を日々綴っていることを親に内緒にしている。

『聞いて、きり。俺、演劇部に入ったんだ。大学に入れば六年間遊んでいられないから今のうちに遊べってさ。成績を落とさないのが条件なんだけど』

 幼少期こそ英才教育を受けていたいっちゃんも、今はある程度の自由を与えられている。

 ワタシはいっちゃんを追いかけ、なんとかこの高校に入学した。

 物心ついたときから、いっちゃんは、ワタシのヒーローで。

 希望で。

 いっちゃんみたいになりたいってずっと憧れていたし今も憧れている。
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