嘘つきピエロは息をしていない

 ――天真爛漫で芝居好きな女の子

 そんな【仮面】を吉川は一色からもらった。

 それをずっと、演じ続けている。

「そして今も。きりの隣にいるべきなのは俺だって思っているし。その男とは関わるべきじゃない」

 吉川の視線が、ゆっくりと、俺を捉える。

「どういうこと……?」

 吉川の声が、震えている。

「なぁ、内貴。お前の母親がお前に過干渉になる原因を考えたことがあるか?」

 母子手帳どころか、戸籍にすら載っていない俺の父親の名前。

 ほんの僅かな可能性ならガキの頃から握っていた。

 それが成長していくにつれ、鏡の前に立つ自分を眺めるにつれ、ハッキリと確証に近づいていった。

「お前が地味にしてる一番の理由は。その顔が見られたくないんだろう?」
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