嘘つきピエロは息をしていない
*
いっちゃんが、なんの話をしているか、わからない。
「いっちゃん……どうしてそんなこと言うの」
「いいか、きり。内貴といるのは危険だ」
「……キケン?」
「そうだ」
ナイキくんの、なにが、危ないの?
「コイツは素性を明かさないんじゃない。明かせないんだ」
ナイキくんは女の子が苦手で。
モテたくないから眼鏡とかかけて。
騒がれたくないから偽名使った。
そうでしょう?
「お前の写真をマスコミに送れば騒がれるだろう。なぁ内貴?」
――マスコミ?
「かつて期待された名俳優に隠し子がいるなんて。彼の遺伝子を継ぐものがいるなんて知れたら、世間は放ってはおかない」
「はは。なにを言い出すかと思えば。他人の空似って言葉も知らないのか?」
笑って言ってのけるナイキくん。
「関係ない。仮に別人だとしても、そんな顔してるんだ。十分なネタになる。欲しがる芸能関係者なんて大勢いるだろうな?」
「それで?」
「そうなるとお前の母親は気が気じゃなくなる。今でも精神的に余裕ないのに、お前が世間に顔を出したり家にマスコミなんて押し寄せたらどうなると思う?」