嘘つきピエロは息をしていない
そんなことしちゃ、ダメ。
ナイキくんはさっき話してた。
お母さんはとても心配性で、お薬を飲んで、精神を落ち着かせているような状態だと。
「人の家庭めちゃくちゃにして楽しいか」
「楽しくなんてない。する気もない。きりと関わらないと、一言でも約束すればいいだけだ。しないなら鬼にでもなってやるよ」
「吉川を守るためか?」
「そうだ。お前といれば、遅かれ早かれメディアはお前に注目する。逃げ続けたりなんてできない。そんなとき、きりが傍にいれば迷惑する」
……そんなこと、ないよ。
ナイキくんが、なにかに立ち向かう日が、来るなら。
ワタシも。
……ワタシも、戦う。
「聞いてて呆れるよ。結局アンタは吉川を縛りたいだけだ」
「違う」
「難癖つけて男を寄せ付けたくないだけだ」
「違う!」
「好きにすればいい。俺の秘密でもなんでも勝手にバラしてろ」
「……なんだと?」
「結局俺は自分が吉川にどう思われるかばかり気にしてきた。吉川の前向きさに元気をもらって。そんな吉川とだけ向き合おうとした」