嘘つきピエロは息をしていない
下手くそに、息を吸い込んだ。
赤ちゃんが生まれて初めて呼吸をするように。
それは本当に下手くそだったけれど――生きようという想いが込められていたんだ。
「吉川!」
むせ返るワタシに近づいていきた内気くんが、力一杯、ワタシを抱き寄せる。
「お前っ……」
ナイキくんに掴みかかろうとするいっちゃんを、
「まぁまぁ」
取り押さえたのは、保先生だった。
気づけばその後ろに、部長と、西条くんと、それから――みんながいた。
「なあ、斉。脅迫罪って知っているか?」
部長が微笑んでいっちゃんを見つめている。
「内藤のことちょっと脅しすぎだ」
「訴えさせますか? 証拠もないのに」
「証拠ならある。会話は録音させてもらった」
部長の言葉にいっちゃんは、希望を失うどころか――
「そういう人でしたね。部長は」
呆れて笑っている。
さっきまで怒っていたように見えたのに。
「言っただろう? 雛が可愛くて籠から出したくない気持ちはわかる。だけどそれじゃあ成長しないよと」
「いいんですか。内貴をかくまって。アイツは――」
「大歓迎だ。むしろいいネタになる」
あっけらかんと言う部長に、
「鬼かよ」
苦笑いするナイキくん。