嘘つきピエロは息をしていない
「内貴を取材するなら、その三倍は演劇部を宣伝してもらわんとな?」
部長に負けず劣らず打算的な保先生に、
「勘弁してくれ。まあ、もしバレたらそのときはそれもアリか」
折れるナイキくん。
「なんだマックス。腹くくったのか?」
「当然だ」
「入部届の名前はなににする? マックスか? デレオか?」
「内貴だ」
保先生と笑い合うナイキくんに
「見捨てるのか? 自分の母親を」
いっちゃんが、問いかける。
「ンなことしねぇよ」
「だけど大ごとになれば、きっとお前の母親は……」
「面倒見てやるよ。どんなけ不満あっても世話になってきたことには変わりねぇ。反抗期に反抗してやるのも親孝行だろう?」
そういうナイキくんに迷いはなくて。
どこか吹っ切れた様子で。
いつも感じていた分厚い壁なんて、なくなっていて。
「吉川のこと、お前に任せようと思った。だけどもう迷わない。コイツは俺が、この手で――」
「あの。ナイキくん」
「あ?」
「そろそろ。離してもらえる、かな」
「は?」
「苦しい、です」
「……すまん」
そんなナイキくんを見ていたら、勇気が湧いてきた。