嘘つきピエロは息をしていない


「つまり」

 ここで会話に加わってきたのは、西条くんだ。

「吉川さんは実はめちゃくちゃ根暗なのに、一色先輩の暗示でウザいくらい前向きに振る舞ってきた。ってことでオッケーです?」

 みんなもワタシも言いにくいこと、さらっとまとめてくれてありがとう。

「あ、暗示ってわけじゃ……ないの。もっと明るく振る舞ったら、和子さんも喜ぶし。みんなともうまく付き合えるってアドバイスしてくれたの、いっちゃんは。ワタシがいっちゃんに頼んだことなの」
「表と裏。使い分けられる先輩に憧れたんだ?」
「……うん」
「それでピエロの仮面をつけた」
「そのとおりだよ、西条くん」
「はあ。そんな器用なこと吉川さんができるわけないのに。バカなの?」

 西条くんがすごくイジワルになっちゃってるのはどうして!?

「でも、スッカリ騙されていた。俺も内貴も、みんなも。君は天才なのかもね」

 そんなことない。

 ワタシは、天真爛漫な吉川きりから完全には消えなかった。

 特にナイキくんの前では――

『一年が私しかいないの、演劇部だけだよ』

 メソメソした自分も見せてしまったし、そわそわして、思うように気持ちが伝えられないこともあった。

 消えてしまいそうな本当のワタシが見え隠れしてしまったんだ。
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