嘘つきピエロは息をしていない

 それから、一週間がたった。

「ウチキっていつも難しそうな本読んでるよな」
「たしかに。宇宙とかミステリーとか」
「マジで謎。女に興味ねーのかな」
「そんなことより、西高との合コンさぁ――」

 平穏な高校生活を送るという俺の目標は、相変わらず遂行されつつある。

 一応ここは進学校の括りに入る高校で、入試の成績順で上から選ばれた生徒の属するクラスだが。

 男連中が話題にあげることといえば流行りのゲーム、音楽、そして女の話くらいだ。

 一方、女子は色恋沙汰とドラマに関心が強い。 

 誰に彼氏がいるだとか、イケメン俳優がどうだとか。

 絵に描いたようなガリ勉タイプもいるにはいるが、そこそこ浮いている。

「合コン行くなら、たもっちゃんにアドバイスもらっとけよ」
「え? たもっちゃん?」
「なんと。勝率100パーらしいぜ!」
「やっば。師匠って呼ぶわ俺」

 ここ一週間で、特段変わったことなんてない。

 つまり、あれだ。

 俺がなにが言いたいかと言うと、どうやら吉川きりは俺の秘密を言いふらしてはいないらしい。

 アイツ新入部員確保できただろうか。

 どう考えてもコミュニケーション上手ではないから茨の道に思う。

 追いかけてきて

『ナイキくんが欲しい!』
『けっして性的な目ではみていません!』

 ……だもんな。

 インパクトあるし熱意はうぜぇくらいに伝わってくるが、部活勧誘の仕方としては斜め上をいっているとしか思えねぇ。

 もっと普通に――というか自然に人と距離を詰められねーのか?

 はやいとこ何人か見つかるといいけど。

 まぁ俺ほど期待値の高い男ってそういないだろうな。
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