嘘つきピエロは息をしていない

 高校生にもなって廊下に立たされるという私の黒歴史が誰かの楽しみに変わるならまぁ刻んでもいいか、という気になってきた。

「女バスは、一年生何人いるの?」
「んー? あたし入れて、十四人」
「そんなに!?」

 バスケって何人でチーム組むんだっけ。

 一年生だけで組めちゃいそうだ。

「今年は特別多かったみたい。未経験者もいたしね。去年は三人だったらしいよ」

 その中の一人だけでも演劇に青春を捧げてくれたらどれだけ嬉しいか、なんて考えてしまったことは内緒だ。

「いいね、楽しそう!」
「まぁでもみんなライバルでもあるからね」

 真琴の声のトーンが落ちたことに気づく。

 声も小さくなった。

 ひょっとしてみんなには聞かれたくないのかな。

「ライバル……」

 つられて私の声も小さくなる。

「そう。レギュラー枠には限りがあるの。試合に出られるのはその人たちだけ」
「真琴、今度試合に出るって喜んでたよね?」
「うん。喜べたのは、きりの前だったからだよ」
「え……」
「一年生であたしだけが選ばれた。二、三年で選ばれなかった人もいた。それって実力を認められて嬉しい反面、相当なプレッシャーなんだよね。誇りたい気持ちと、申し訳なさがある。もちろんそんな弱気になってること部員の前では言えないけどさ」
「そっか」
「選んでもらったからには頑張るよ。努力してきたからレギュラーでいられることに自信持ちたいし。きりも頑張ってね」
「うん! お互いがんばろうね」
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