嘘つきピエロは息をしていない


 お弁当を食べ終わったあと構内を散策していると、突然何者かに背後から手を引かれあっという間に空き教室へと連れ込まれた。おそるおそる顔をあげると――

「……ナイキくん!?」

 地味版のナイキくんが、そこにいた。

「相変わらず隙だらけだな」
「ビックリしたぁ! 普通に声かけてよ」
「もたもたしてたらお前といるとこ見られるだろ」
「見られちゃダメなの?」
「この前、吉川といるとこ見られて面倒なことになったからな。もうあんなのは御免だ」
「……?」

 朝一緒に靴箱から教室まで歩いた日のことだろうか。

「早速だが本題に入る。俺の睡眠妨害したくなきゃ耳の穴かっぽじって聞け」
「え!?」

 このあと眠るつもりなのだろうか。

 そういえば初めて出会ったときも眠っていたよね。もしかしてナイキくんにとってお昼寝は日課なの?

「うちのクラスに杉田(すぎた)って生徒がいる。まずは、そいつを口説こう」
「勧誘するってこと?」
「そうだ」
「どんな子なの?」
「省略する」
「えぇ!?」
「会えばわかる。お前だって俺から聞いた情報より自分の目で見てどんなヤツか知った方がいいんじゃねーの?」
「……それは、そうだけど。帰宅部なの?」
「いいや」
「ダメじゃん!」
「話を最後まで聞け」

 ムギュっと頬をつねられる。
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