嘘つきピエロは息をしていない

「やめてよっ……」
「この学校には、実は、二つまで部活に入れるというルールがある」

 ナイキくんの言葉を聞き、ある単語がぽつりと頭の中に浮かんだ。

 それは私が考えもしなかったものだ。

「……兼部?」
「その通り。なにも帰宅部に絞らずとも比較的ゆるい活動の部活に入ってるヤツを引き抜けばいい」
「ひ、引き抜くの!? 両立してもらうんじゃなくて?」
「ああ。最初は兼部させておいて、最終的に演劇部に転部させる」
「なんか詐欺みたい」
「アホか。要はハマらせればいいんだろ?」

 ――!!

「吉川がのめり込んだ世界は自信持って人に勧められる場所なんだろ? だったら道連れにしてやれよ。後悔させないくらい。他人振り回すの得意だろ?」
「ナイキくん……」
「それともなんだ。もうへこたれてて、勧誘する気なくなったか?」
「あるし!」
「だったら四の五の言わずに、やれ」
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