嘘つきピエロは息をしていない
これが少女漫画なら確実にバラやキラキラが彼のバックに現れるだろうし、ここで女の子ならドキドキ胸キュンもう大変、といった感じだろう。
しかし私は
『ウゥッ……演劇部に欲しい』
という気持ちがどうも勝ってしまうなぁ。
「先に行ってるぞ」
クールそうな人が行ってしまった。
「あっ……ごめん。友達」
「いいよ。俺、君とまた話したいと思ってたから」
あの西条くんが私にそんなこと言ってくれる日がくるなんて、思いもしなかった。
そばにいた女の子があんぐり口をあけているが、私だって驚いている。
落ち着くんだ吉川きり。
西条くんは、みんなの王子様。
基本的に神対応なんだ――と心の中で唱える。
「俺、あんな告白されたの初めて」
「ちがうの! あれは告白じゃないの!」
「……え?」
「だから、その。あのときの言葉は、忘れてください」
ああ、あれからずっと私は西条くんに片想いする女の子だと思われていたんだね。
「そっか。それで今日はA組になんの用?」
よくぞ聞いてくれました。
「杉田さん、おられますか?」