王子は冒険者になる!


そもそも、王子に付ける『影』は『身代わり』も兼ねている。
学園に上がるころ
狙われやすくなるから、
所在を隠したり、行動しやすいように 背丈も雰囲気もにた奴が
諜報部から選ばれる。

だから、最近選出された
第一王子のアレッサンドについた『影』も若い 実力者が選ばれた。


第二王子のフランチェスコまだ10歳の子供に
25歳のいい大人のジゼが選ばれる。
ということ自体が異質なことだ。


「ふぉふぉ。だから、『影』というより
 側近にしてしまえ。と思ったんじゃよ。」
「あのな、じじい。」

ジゼは、諜報のための情報収集や
暗殺のための技術は持っていてるし、
変装やその場になじむために ある程度のことはできるが・・・
あくまで、ある程度だ。

王子の側仕えが出来るほどの力はない。

「潜入捜査じゃないんだぜ?
 ある程度の知識と 立ち振る舞いはできるだろうけど
 「王子」のサポートはできるのか・・・
 と いうか、全然『身代わり』はできねぇし。」

体格が違う。
あの「光の王子」の 輝くような「王子様」みたいな
屈託のない笑顔も、オレには無理だしなぁ。

「ふぉふぉ。大丈夫じゃよ。
 フランチェスコ王子はまだ『公務』も少ないしのぉ。
 お前に求めるのは・・・騎士だけではできない、フランチェスコ王子を
 すべての『陰謀』から守ること。じゃな。」

「・・・むずっ。難しすぎる。
 なんだよその、ふわっとした危険・・」

と言いかけて、フランチェスコ王子の そばにいた警護騎士の
裏切りを思い出す。
騎士団をはじめ、諜報部も事後処理で忙しかったらしい。
結局 おおもとである黒幕には『たどり着かない』らしい。


「ふぉふぉ、お前は 別件で国外にいたから
 事後報告書でしか 解らんじゃろうがな・・・。
 フランチェスコ王子の・・・光の魔力・・・
 というか光の魅力は価値があるぞぃ。」

「・・・光の魅力って・・・魅了でも使ってんのかぁ?
 ってか、じじぃ、そんなに気に入ってんのか?」

「ふぉふぉ。まぁ。そうじゃの。
 わしの知っている、最高の『影』を諜報部から引退させて
 王子の側に着けようと、あちらこちらに頭を下げるくらいには
 フランチェスコ王子を気に入ってるのぉ。」

ぐ、っと言葉に詰まる。

「悪いのぉ。ジゼ。
 おぬしが諜報部 最高の実力者であることは解るがの。
 すこし、じじぃの 頼みを聞いてくれんかの?」

「っ・・・じじぃ・・・
 はぁ。わかったよ。ガルじぃちゃん。」

ジゼは、ふっと笑った。

バームス先生も、ふっと笑う。

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