王子は冒険者になる!



初顔合わせの時、真正面からみた「フランチェスコ王子」は
噂にたがわず「光の王子」だった。

王の執務室の隣の謁見の間で行われた
側近の任命式。
オレが王から任命されて一つ前に出ると
フランチェスコ王子が 驚いた顔から戸惑った顔・・・
そして、にっこりと 笑ったのだ。

うわぁ。不覚にも見とれる。
これが、「光の王子」たる所以か。

本人は気が付いているのかどうか
金色の髪と笑顔とともに軽くただよう、光の魔力が 王子の周りに輝いて
本人の魅力を一層引き立てる。

なまじな魅了の魔法よりも厄介な「光の魅力」だな。

思わず、じぃっと見つめる。
「・・・・---で、任命する!」

は。思わず見とれていて、王の言葉を聞きのがしたが
オレは「頂戴いたします」とつつがなく任命式を終えた。とおもう。

オレが最高の暗殺者・・コードネーム「アロー」というのはフランチェスコ王子は知らないだろうな。まぁ あまり知らなくていい事なんだが。



「フランチェスコ王子。今日からよろしくお願いします。
 ジゼディシアロー=バームスです。」
「よろしくね。僕は フランチェスコ=アキ=ヒサ=ルアーニル。
 えぇと、10歳です。ルアーニル王国の第二王子で・・・
 えぇと、よろしくお願いします。」

にっこり。
魔力がきらめく。

うわっ。びっくりした。
というか なんて『敵意』のない『屈託のない』笑顔・・・

「はい。存じ上げています。
 フランチェスコ王子。」
「うん。えぇと、ジゼディ、シアロー・・・」

「長いので、ジゼ、とお呼びください。」
「わかった。ジゼ。
 僕のこともフラン と。」

また、にこり、と笑う。

無防備・・・無防備すぎる。

思わず じぃっとみる。

「・・・フランチェスコ王子。と呼ばせていただきます。」
「えぇ。ジゼ、冷たーい。
 というか、当たり前か。」

王子は、ふっと 砕けた態度で 楽しそうに笑う。

「ジゼには悪いなぁ。と思うよ・・・
 優秀な文官、だったんだろ?
 それを、俺の側近に任命されるなんてなぁ。」

・・・ん?
どういう意味だ。


「それはーー?」
どういう意味だ。という前に

「フランチェスコ王子!言葉づかい!」
「うわっ。リィア だって・・・側近っていうからいいかなぁってさぁ。
 ってか、ごめん、リィア。怒ると眉間のしわが深くなるよ~。」

「だから!!!」
「あぁ わかった。わかった。」

王子はたのしそうに、侍女であるリィアをたしなめていた。
そして、ん、っと 姿勢を正してから

「では、改めて 
 ジゼ。僕の隣に立ち 僕の力になるがよい。」
「はい。お受けいたします。」

くるっと オレは円を描いて「側近の忠誠」を刻もうとすると、
王子は少し困ったように笑って「それはいらない」
とおっしゃった。

「は?」

な、何を言ってるんだ?
これは 神聖な儀式・・・だぞ?

バカにしているのか?---オレを?

「あーー、すまん。バカになどしてないぞ。
 ジゼ、お前は僕を 裏切るのか?」
「いえっ!そのつもりは『今は』ありません。」

少し、邪険に扱ってみる。
だって これぐらいの嫌味はいいだろう。
後ろに控えている護衛騎士が チャリっと身構えるのがわかる。

へぇ、騎士たちには慕われているのか・・・

「ふふ。今は、か。
 面白いな。だから 言葉だけでいい。
 俺・・・っと 僕は ジゼを「信じる」から魔法での『契約』はいらん。」

「・・・・・・は?」

信じる?信じるっていったか?
何言ってるんだ?この 王子は・・・忠誠を誓わなくても・・・
オレを 信じるだと?

「それに、ジゼはずっと僕の側近でいられるか解らないし・・・
 僕の側を離れるとき、この『契約』の魔法を受けてしまうと
 君が困るだろう?なにかと縛られないほうが、ジゼが動きやすいんじゃないか?」

「・・・え?」


がんっと 何か ものすごい衝撃がきた。
もしかして、
オレが『影』もかねて側近に指名されたのを知っているのか?
いや、そうだとしても・・・諜報部のトップとあの 魔力操作だけはすげぇ
じじぃが改ざんした書類だぜ?
解るはずが・・・無いと思うが・・・
動揺するオレに、
フランチェスコ王子は「じゃ、そうゆうことで」といって
またにっこりと笑った。


後日、専属騎士である騎士ビラットの「騎士の祈り」すら受けてないと知った。

面白い?!バカなのか?
専属騎士の忠誠すら 受けなかっただと??

無防備すぎる。

はぁ・・・これは 思ったよりも、厄介な仕事かもしれねぇなぁ。
楽しそうなじじぃの顔が浮かんで
また、ため息をついたのだった。

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