あなたと私と嘘と愛

もしかしてあの時の現場を見られたのだろうか?

私がよそ見して車にぶつかりそうになった時、優斗に手を掴まれ助けられた現場を。

もしかして…
それを思い出した途端サーと身体中の血の気が引いた。


「…それって場所はどこでした?」


恐る恐る聞いた坂井さんの返事はやっぱり予想通りのものだった。
坂井さんはあの時の優斗とのやり取りを偶然見てしまったんだ。
仕事で営業先の帰りに偶然坂井さんもあの交差点にいたらしい。

ちょうど信号待ちのタクシーに乗っていたところに私と優斗の姿が見えたと言う。


「ずいぶん親しそうな感じだったから、もしかして亜香里ちゃんにはそういう人がもういるのかなって」

「ち、ちがいますっ!あれは誤解です!あの出来事は本当偶然で、私がよそ見して車に引かれそうになった所を助けてもらっただけでっ」

「…じゃああれは僕の勘違い?彼とはどんな関係?」


坂井さんの瞳がキリッと鋭くなる。
伺うように真っ直ぐ見つめられて思わずどう答えようか口ごもる。

父親だと本当のことを言って信じてもらえるだろうか?
いや、今の雰囲気じゃきっと信じてもらえない。
友達だと言ったところで余計怪しまれるかもしれないし、何だか上手く切り抜ける感じがしない。

だとしたら、一番ベストな言い訳は?

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