あなたと私と嘘と愛
「あ、兄です!」
考えた末、勢いと一緒に出た言葉はこれだった。
だって彼は一応家族だし、これなら一緒にいても普通でしょ?
「あの人は私の兄なんです」
「……お兄さん?」
「そ、そう、年の離れた兄がいるんです」
本当は違うけど家族には変わりない。
ここで真実を言ったところで余計複雑になりそうだし、母のことだって話さなきゃいけなくなる。
それこそ面倒だし、これが一番いいんだと坂井さんには悪いが自分の中で無理やり納得させた。
「……お兄さん……」
「そうなんですっ」
「いやあれ?でも前に兄弟はいないって言ってなかったっけ?」
「い、言ってませんよ!何かの聞き間違いじゃないですか?言った覚えはありません」
嘘を本当にするように真っ直ぐ目を合わせた。
優斗のせいでギクシャクなんてしたくない。
真剣な顔を向けていると、私の顔を見続ける坂井さんの表情から次第に険しいものが抜け落ちていく。
「…なんだ……」
そう呟いて頭をくしゃりとした。
「そっか…、僕はてっきり……」
坂井さんはその場で項垂れ安心しきった声を出す。