あなたと私と嘘と愛
優斗は母を見ても驚きもしなかった。
むしろ彼は呑気にう~んと伸びまでしてにこりと笑いかける。
「お帰りなさい」
「ただいま」
そんな優斗を見て母もうっすら笑った。
やましいことは何もない。謝ることはないのに、母から浴びせられる視線が怖い。
「ああそっか、酔い潰れてそのまま寝ちゃったのか」
「へぇ、二人でずっと飲んでたの?」
「そうですよ」
あっけらかんと打ち明けられて私の背中から冷や汗が。別に深い訳などないはずなのに、それを聞いた母の口がピタリと止まったから余計顔色も悪くなる。
確かに間違ったことはしてない。
ここで焦ったら余計怪しまれそうなのに、正直に言ってはいけないような気がした。
「あなた達…」
だけど次の瞬間、そんな私の焦りをじっと見ていた母の声質が突然変わる。
「良かった。やっと親子の絆が生まれたのね!」
「え?」
「ようやく仲良くしてくれる気になったのね!嬉しいわぁ」
真剣な声…と思いきや何かを思い立ったかのように母が両手をパチン。目元が朗らかに垂れる。
態度が急変し、にっこり微笑んだ母に今度はぽかんと動きが止まる。