あなたと私と嘘と愛
「これぞ、親子の仲睦まじい光景よ!」
「…は?」
ついには目元をうるうるさせ、私の手をぎゅっと掴む。
「この日をどんなに望んでいたか、やっぱり親子はこうでなくっちゃね~」
本当よかったわぁ。と涙ぐむ彼女に緊張の糸がプツリと切れる。
(おいおい)
まさかのそっち?
へんな誤解はされてなかったものの、とうとうハンカチまで出し始めた彼女に唖然と言葉を見失う。
(これって演技?)
怒られる覚悟でいたのに、むしろ喜ばれてしまった。
(じゃあさっきの視線は何?あの攻撃的な眼差しは?)
私の勘違い?
「そうだわ、楽しそうだから今度は私も交ぜてちょうだいよ」
「それはもちろん」
「たまには家族団欒で飲むのも悪くないわよね?亜香里」
「…え、うん…」
にっこり微笑まれて私はぎこちなくしか頷けなかった。
なにこの変わりよう…
だけどそれから母は上機嫌。
その後もニコニコ話すだけ話し優斗を自室に連れていった母は数時間後、珍しく部屋着姿の格好で右手にワインを持っていた。
「今日は昼からパーっといきましょう!」
「……」
そしてテンションが高い。
たぶん仕事が一段落したのだと思う。
だからかその日、本当に家族団欒?は開催されることになり私は複雑の思いのまま一緒に飲むはめに。
「ほらほら、亜香里ももっと飲みなさい」
「あ、ん…」
「優斗〜サーモンのカルパッチョが食べたいわ。作ってちょうだい」
「いいですよ」
(本当自由な人だ)
相変わらず何を考えてるのか分からない。
それに従う優斗にも苦笑い。
とっても不思議な光景の中、私は二人の様子を伺いながらグラスを口につける。