あなたと私と嘘と愛

それから流されるようにお酒を飲んだけど、何故か私の視線は優斗の方へと流れた。

気づくと目で追っていた。


(すごく普通だ…)


穏やかな笑顔と美味しい料理。
どちらかと言えば父、母、娘ではなく、母、兄、妹というような光景に見えるけれど、これぞ中睦まじい家族の団欒とでもいうのだろうか?


「ゆうと〜、ワインのお代わりちょうだぁい」

「いいですよ。でも楽しいのは分かりますけど、あんまり飲みすぎたらダメですよ」

「いいじゃない。酔ったら優斗が介抱してくれるんでしょ?」


うふふ…と可愛らしい声。
楽しそうに笑う優斗に目がとまる。


(どうしてだろう…)

素直に楽しめない私がいた。


(なんだ、ちゃんと仲良しだ)

今まで家政夫と主人のような関係だと思ってた。

夫婦だと言われてもどこか嘘っぱちのような気がしてた。

けど今は…
母と優斗の仲良さげな空気を初めてちゃんと肌で感じると、どうしてか胸がムズムズとする。

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